コムスンでケチがついたグッドウィルだが、こんどは派遣業法違反で業務停止命令が下された。弱い立場の人間を散々食い物にしてきた悪徳口入屋の末路とでも言った方が良いのか。日雇い派遣を派遣業法で認可したのがそもそもの間違いである。要するに山谷や釜ヶ崎、あるいは黄金町あたりで立ちん坊をしている労務者を、トラックに乗せて現場に運ぶ「手配師」を合法化しただけの話である。本来はあってはならぬ存在を合法化したわけだ。手配師が行う搾取の構造にまったく手をつけずに、それを企業体として行うようにしたわけだ。手配師に遵法精神なんぞを説いても無駄であるのと同様のことが、日雇い派遣の現場で見事に起きてしまった。
さて、グッドウィルが倒産しようとどうしようと構わないのだが、問題は派遣登録している人たちである。こちらは先ごろ話題となったネットカフェ難民なんぞも居て、グッドウィルがいくら搾取の元凶であろうと、翌日の生きていく糧を得る場が無くなる、ということなのである。業務停止が長引くと、彼や彼女らはとたんに干上がる。生きていく方法が無くなるわけだ。
法制度を遵守することで、生きることが困難になる人が増えるという図式である。もちろんグッドウィルだけが日雇い派遣会社ではない。しかし、グッドウィルは最大手である。影響は大きい。
影響の最悪のシナリオとしては、男性で日雇い仕事が無くなった連中が窃盗や強盗などの事件を起こし、女性は街角に立ち売春に走るというものがある。背に腹は変えられぬ、という実情がそこにはある。史上最高の収益を上げているという「好景気」の裏側に、そうした暗黒が口を広げて待っているわけだ。
大企業が空前の利益を上げている裏で、下請けや孫請けの中小零細企業は、その利益を上げている大企業に、部品コストの削減などを強く申し渡され、収益も上がらく、社員への年末賞与すら満足に渡せぬ状態となっている。弱者を叩き、埃も出ないほど絞り上げての「史上最高の収益」なのである。勝者は益々肥え太り、弱者は瀕死の状態にまで痩せ細るという、ほとんど叡智の欠片も無い、単なるジャングルの弱肉強食よりもたちが悪い実態がそこにある。ジャングルの動物は腹がくちくなれば、それ以上の獲物はとらないのだが、このコンクリートジャングルに住まう人という名の肉食獣は、腹一杯の状態でもさらに貪欲に餌を得ようとする。平たく言えば欲望だけは動物以上であり、その欲望を抑える叡智であったはずの社会保障制度が瓦解してしまった、ということなのである。
今頃になって、大企業の経営側は、社員の可処分所得を増やさなければならない、などと言っているわけだが、これはドル安や原油高という要因による貿易収支の縮小を、内需という消費で賄うことを考えたためだろう。しかし、すでに手遅れとなりつつあるのではないか。可処分所得は低下し、預金している家庭は激減し、新たな消費はすでに停滞しているのである。家電では薄型テレビなどが瞬間的には売れたが、すでに秋口ころにはその消費も停滞しているのである。さらに、大企業の社員だけでは内需の拡大といえるほど消費は伸びない。好景気と騒がれていた時代であっても下請けや孫請けの会社の景気実態は良いとは言えない状態だったのである。それが景気の減速が見えたわけである。良くなるわけが無い。それとも大企業経営者の皆さんは、下請けや孫請け企業への発注の際、それらの品の単価を上げても構わないわけなのであろうか。
グッドウィルが違法な派遣をしている現場として槍玉にあがったのが佐川急便である。佐川急便と言えば、配送担当運転手は各地にある集合場所に朝の6時に集合して、そこからバスに乗ってやや辺鄙なところにある配送センターに通う、などという勤務体系を持つ会社でもある。配送基地では分別する側は24時間体制であり、配送するドライバーは早朝から夜遅くまで、担当した配送物が一応配送完了となるまで働くこととなる。ドライバーは忙しくてもソコソコ高給が保障されているが、実は日雇い派遣の人たちが働くのは、配送センターでの種分け業務などの重労働なのだ。これがドライバーから比べると格段に安い賃金なのである。
グッドウィルが違法とされたのは、港湾業務に日雇い派遣労働者を送り込んだということもある。港湾労働従事者の中でも特に貨物の積み下ろしをする人たちを沖仲仕と昔は呼んでいたわけだが、これが滅法キツイ仕事であり、しかも危険も大きな仕事なのだ。当然ながら専門職として企業が自らの責任として、そうした作業員の健康や危険などの配慮を行う必要があり、だからこそ日雇い派遣の労働者には門戸を開いていなかったわけだ。そうした理由のある「禁止事項」を軽く考え、法に反する行為を平然と行う。日雇い派遣で港湾労働に従事した人間が、怪我をしたり、場合によっては命を失っても、帳面上は港湾労働ではなかった、と言い張るつもりだったのだろう。企業の社会的責任などは考えても居ないのだろう。
考えてみればグッドウィルがやっていたコムスン。他の在宅介護サービス会社が経営に青息吐息なのに、なぜか平然と業務をこなす大手だったわけである。コムスンそのものは赤字だったのか。あるいは法人税節約のため、グループ内に赤字企業が必要だったから赤字幅を調整しながら経営していたのだろうか。だから想定以上に赤字が膨らむ状態になると、違法な業務を行っていたのだろう、などと勘繰ってしまう。で、この勘繰り、果たして大はずれなのだろうか。








